【社長コラム】イノベーションの流儀   第13回 支店をぶっ潰す!

【社長コラム】イノベーションの流儀   第13回 支店をぶっ潰す!

皆さん!こんにちは!

年が明けてから早1か月。
年を重ねる度に時の流れの速さを感じるようになりました。
先日タクシーに乗った時のタクシードライバーの話ですが、
「お客さん!年齢は車の時速みたいなものだよ。
 20代は20キロ、40代は40キロ、60代になったら60キロになるから、
 過ぎ去る時間が速く感じるものですよ。」
と言われたことが心に残っています。
今やるべきことは今やり、問題を先送りしないことを肝に銘じた言葉でした。

前回の続きです。
私は、最大マーケットである首都圏の大型法人専門支店だけを集めた事業会社の営業担当役員に命じられました。
分社化に伴って設立された、グループで最も収益を稼ぐ会社です。

「支店長をやったことのない奴に、グループ最大の事業会社の営業トップが務まるのか、お手並み拝見だな」
と陰口を叩かれることもありました。
一方、私は腹の中では、「お前らは社長、経営者経験はないだろう!支店長をやっているからどうだというのだ!」
と子供じみたようなことを考えていました(苦笑)。
猛者が集まるこの会社の営業をリードしていくために思案した結論が、「理詰めで説き伏せる」でした。

当時、人事権や経費管理などの権限は支店長・事業部長に集中していました。
常に予算を達成している支店長・事業部長の発言は大きく、少なからず経営を左右するくらいに影響力がありました。
都心の支店長・事業部長の個室は、豪華なソファに、10名程度がミーティングできるテーブル・椅子があり、
ゴルフのパター練習ができるくらいの広さでした。
大企業の社長室と比較しても見劣りしないくらいに立派なものでした。この個室が権力の象徴みたいなものです(苦笑)

会社が営業スタートするまでの10カ月の間に、マーケットを分析し、
この会社の事業理念、ビジョン、全体戦略・個別戦略・戦術、人財育成などをはじめとする
経営・事業計画の策定をしなければなりませんでした。

私自身、支店マネジメントの経験もありませんでしたし、
後日任命されたメンバーも昨日まで支店で営業をやっていた社員ばかりでした。
営業は出来ても事業計画を策定する能力・経験がないのは仕方がないことでしたが、
その分、昨日まで居た現場の感覚を持っていたので、議論を重ねて行くほどに、具体的な戦略・戦術がどんどん出てきました。
現場から遠い本社のデスクで考えている官僚よりも、良いものが出来たと思います。

そんな中で、密かに私の中で考えていたことがありました。
将来に亘って成長が見込めない本業の、今のビジネスモデルを抜本的に変えていくことです。
事業領域を拡大していかなければ、この会社の将来は先細り、将来がないと思っていました。
実際現場を回り、支店長・事業部長に尋ねたのが、「競合他社と当社が提供するサービスの違い、競争優位性」についてでした。
現場トップから出た言葉は、業界一位のブランド力とネットワークでした。

正直に言えば、競合他社と当社が提供するサービスにはほとんど差異がありませんでした。
差別化しづらい本業を強化するためには、競合他社と戦う土俵を変えるしかありません。
事業領域を拡大し、法人のお客様の上位課題を解決できる組織スキルを持つしか方法はないと私は考えました。
その時に想定される競合は、同業の競合他社ではなく、
大手広告代理店やマーケティング会社、システム会社、イベント会社、コンサルティング会社となります。
本業そのものは今の支店体制と組織スキルで十分対応できますが、本業以外の事業領域に進出するためには、
社内に分散する人財・ノウハウを集約し、外部の人財を活用できるような広告代理店モデルに変える必要がありました。

長年脈々と続けてきた支店中心経営、支店第一主義、そこでの大きな成功体験を否定することになりますから、
会社設立準備室のメンバーの中でも直属の部下としか共有しませんでした。
社長をはじめとする総務人事にも内密に事を運ばなければ、その構想は潰される恐れがあったからです。
もちろん、全支店長・事業部長が猛反発することは目に見えていましたので、
外部に漏れないようにするどころか、内部にも漏れないように進める必要がありました。

会社設立前に全支店長・事業部長を集めた戦略会議を帝国ホテルで開催しました。
会社の概要、理念とビジョンや戦略などを説明した後、
私の友人でもある、某大学の経営学部の教授にお願いして、
社会環境の変化やこれから企業に求められるマーケティングについて、講和をいただきました。

もちろん、近い将来、この会社の構造改革に着手するための伏線になるような話をしてもらいました。
参加者の誰もが私の戦略的な狙いを知る由もありません。
時間をかけ、構造改革を通じて新たなビジネスモデル構築に向け、
共感する仲間を増やし、構想をよりブラッシュアップして行かねばなりません。

その当時の私の元部下から、
「あの当時、川村さんは支店をぶっ潰す!と言っていましたよね。
 その時は何を馬鹿なことを言っているのだろうと思いました。
 でもその後、その構想を聞いてワクワクしました。」と言われたことをよく覚えています。

問題は、会社設立した後、この構想をどう進めていくかです。
その後起きたエピソードも含めて、次回お話をしたいと思います。
ご興味のある方は、またのご来訪をお待ちしています。