【社長コラム】イノベーションの流儀   第11回 冷静と情熱のあいだ

【社長コラム】イノベーションの流儀   第11回 冷静と情熱のあいだ

皆さん!こんにちは!

11月に入り秋が深まってきましたね。
以前、私が立ち上げた会社のオフィス近くにあった外苑前の銀杏並木は、
当時11月の中旬くらいから色づき始めたものが、年々色づくのが11月中旬から12月に入るようになり、
今では以前のような黄葉鮮やかな色づきがないまま冬を迎えてしまうことが多くなりました。
日本の四季が織りなす景観が楽しめなくなるのも遠い先の話ではないような気がします。
企業は公器ですから、日本全体、地球全体を考えたミッションをもう一度認識しなければならない時期にあるのかもしれません。

さて、今日は、前回の話にあった人事異動を受けてから、本社勤務になった頃の話をしたいと思います。

正式に内命を受けた後、直ぐに異動先の本社に挨拶に行きました。
異動先は古巣の市場開発部です。
とは言っても、以前の市場開発「室」から「部」に昇格するほどの大所帯になっていました。
もちろん私の知る人間は皆無です。
私の着任は2月1日、そこで2か月間法人向けの新事業部の立ち上げ準備をするのが私のミッションでした。

オフィスに入った瞬間、冷たい視線を感じたのを今でもよく覚えています。
今までの会社は若手中心ですし、新規事業に取り組んでいましたから、
それに比べると、活力というか、“熱”みたいなものを全く感じられませんでしたし、
上司との挨拶の中でも私に期待する言葉などありませんでした。
でも、そのお蔭でこれからまさにアウェイの中で戦う覚悟が出来たように思います。

新事業部立ち上げの4月1日までのたった2ヶ月間で、
将来会社の法人事業を左右するかもしれない組織の事業計画をまとめなければなりません。
しかし、私と同時期に異動してきた、4月から私の部下となる社員たちは現場しか知らず、
事業計画は私自身で作り上げるしかありませんでした。

一方、部下となる社員たちはパソコンを前に黙々と仕事をしているだけで、
新しい組織立ち上げに向かう熱気みたいなものは全く感じられません。
会議中も大半の社員は持ち込んだパソコンに見入っているだけで議論をする様子もなく、退屈な時間が流れるばかりでした。
彼らが検討している各事業のヒヤリングにおいても、やる気が伝わってくる社員は一部に過ぎません。
隣の席に座っていても、メールのやり取りでしかコミュニケーションが取れない社員が多いなど、
前途多難の中で新事業部を立ち上げなければならないプレッシャーを感じながら時間だけが流れて行きました。

そして新事業部発足の4月1日を迎え、総勢約50名の社員を大会議室に集め、私自ら事業計画のプレゼンを行いました。
この時の事業計画の肝は、この新事業部の理念と将来のあるべき姿であるビジョンでした。

私は事業計画の具体的な内容よりも、前職で学んだ理念とビジョンの重要性を説く時間に多くを割き、社員に熱く語りかけました。
一部の社員でしたが、明らかに目の色が変わったように思います。
それからアクションプランの丁寧な説明と、目標達成に対しての評価・インセンティブも合わせて発表したことが功を奏したのか、
多くの社員の表情が明るくなったように感じました。

発足後は各事業の責任者・担当者との個別の面談を重ねました。
といっても、「少し雑談しませんか?」という感じで声をかけ、その事業の可能性を探りました。

担当者は自分の事業を守ろうとするものです。
第三者的な立場で冷静にその事業が明確なビジネスモデルを描き切れているかを何度も確認することで、
担当者の頭を整理させるとともに、事業に対するパッションが本物かどうかを見極めることを繰り返しました

新規事業を推進する上で最も必要なのは、「パッション」だと考えています。
新しい事を進めようとすれば、抵抗勢力が現れ、あからさまに妨害されるか、味方の振りをして足を引っ張られることが多いからです。

人の成功を喜ぶ人間は稀なことだと自覚する必要があります。
パッションは人を動かし、巻き込む大きな推進力となる源です。
私は事業責任者・担当者とは情報量に大きな差がありますし、新たな事業が成功するかどうかなど、分かるはずもありません。
その事業をこのまま進めるか、撤退するかを決めるのは、彼らに事業を成功させるまでやる覚悟とパッションがあるかどうかだけです。

その条件が揃えば、積極的に人と資金を投下しました。
それで後に成功し、事業化したものもいくつかあります。
一方で、私が管轄するあるグループ事業会社の社長との確執が表面化し、日々苦悩したこともよく覚えています。
周囲からは二人の頭文字を取って、「OK牧場の決闘」と揶揄しながら楽しんでいた輩も多くいました。
でもそのことも私にとっては多くの学びになったことは言うまでもありません。
その辺の話は次回にしたいと思いますので、ご興味のある方はまたご来訪ください。