【社長コラム】イノベーションの流儀   第10回 帰任

【社長コラム】イノベーションの流儀   第10回 帰任

皆さん!こんにちは!

8月の戻り梅雨のような気候の後、9月も残暑らしい残暑もなく、寂しい夏だったように思います。
これも地球温暖化の影響でしょうか。
イギリス・フランスに続き、中国でもガソリン車とディーゼル車の2040年販売禁止が発表され、
いよいよ地球温暖化対策が進む機運が高まって来ているように思います。
遅々と進まない北朝鮮問題も、内容が後退したとはいえ、全会一致で制裁内容が決まり、実行に移されることになりました。
それ以外にも世界でいろいろな動きが出る中、それと連動するかのように企業を取り巻く環境が大きく変化し、
企業活動そのものにも大きな影響が出始めています。
そのような状況下で、我々はどう生き残るかの選択を求められているような気がします。

今日は、立ち上げた社内ベンチャー企業が軌道に乗った後、私が親会社に戻るまでの話を少し紹介したいと思います。

3年目単年度黒字化、5年目累損解消を達成し、グループ会社でもっとも生産性の高い会社になった頃、
親会社100%出資では我々の自由な活動が制限されることから、自分も含め社員による出資を検討し始めました。

実は前例があったこともあり、親会社に何度も掛け合いましたが、
その前例が失敗だったことから、最終的に認められることはありませんでした。

私としては、自ら出資することで退路を断って事業に挑戦することが、
会社を大きく成長させる原動力になると考えていましたので、
とても残念でしたし、大企業の保守的な考えを打ち破れなかった自分が不甲斐なく思いました。
今でも悔しい思いとして残っています。今さらの話ですが…

そんなこともあった中で、10年を過ぎようとした頃、親会社の人事担当役員から直接電話が入りました。
一度、青山のオフィスに伺いたいという用件でしたが、真夏の陽射しが照りつける8月上旬に、
人事担当役員がわざわざ足を運んでくるには、それなりの理由があるはずだと考えました。

青山オフィスに現れたその役員とは面識がなく、来社の目的もよく分からぬまま、私は事業内容の説明を始めました。
役員は終始頷くばかり。とうとう「ところで今日の来社目的は何でしょうか?」と尋ねてしまいました。

返ってきた言葉が、「経営改革プロジェクトを作るので、貴社の優秀なスタッフ**さんを出してくれませんか」
という内容だったので、なんだそんなことかと拍子抜けでした。

それから1ヶ月程経った残暑厳しい頃、再びその役員から電話がありました。
件のプロジェクトに関連した話と思いきや、私自身の人事の話でした。

親会社の本社に新たな法人専門の事業部を立ち上げるので、その部長をやって欲しいという打診です。
私は間髪入れずに答えました。

「今さら大きな組織に戻る気になれません!私はこの会社をもっと成長させて行きたいと考えていますし、
 仕事が面白くてたまりません。お断りします。これは正式な社命ですか?」

小さな組織にはそれなりに苦労はありますが、大きな組織で歯車のひとつとして働くことに意味を見いだせない私には、
本社に戻り出世の階段を上って行くことに価値を感じられせんでした。

それから約1ヶ月半の間、何度も同じ打診を受けては断るということが続きました。
そしてついに11月中旬、社長秘書から1本の電話が入りました。

用件は社長が私とランチをしたいと言っているので時間を取って欲しい、という内容でした。
「もう逃げられないな!」と私は悟りました。
実は皮肉なことに、社長は会社立ち上げ当時の経営改革部の次長で、別会社化については反対派でした。

社長とオフィス近くのイタリアンレストランで人事担当役員も交えたランチが始まり、
大食漢の社長が出てくる料理を次々と口に運ぶのを横目に、私は今の事業の報告を淡々としましたが、
約2時間のランチの間、人事の話は一切出てきませんでした。

「もしかしたら、本社に戻る話はなくなったのかな」と思い、ほっとするのも束の間、
12月に入って直ぐ、また人事担当役員から連絡が入りました。
案の定、話は私の人事異動の話でした。

「来年の4月に本社直轄の法人専門の事業部を立ち上げるので、そのトップに就いてもらうことになりました」
と告げられた以上、サラリーマンの私には逃げ道はありません。

慌ただしい師走の中、その日はひとり青山のバーに立ち寄り、グラスを傾けている内に、
会社を立ち上げてからの11年間に起きたことが走馬灯のように蘇って来ました。
しかし私のサラリーマン人生の中で最も濃密な時間を過ごした会社を去ることに
思いふけっている時間はありませんでした。

次回はグループ本社に戻ってからのいろいろなエピソードをお話したいと思いますので、
ご興味のある方は、またお立ち寄りください。